おいでよクラシカロイドの沼

クラシカロイド 感想。私(ナジェージダ)、ミーチャ(相手方)の座談会形式で行います。よろしくお願いします。

またいつか、クラシカロイド ー総括感想、ムジーク編、総まとめー

ジークについて

ナジェ「正直、クラシカロイドで一番好きになったのは、ストーリーでもキャラ クターでもなく、ムジークなんですよね。ですので、ムジークについて熱く語りたいと思います! 

 クラシックの名曲を現代風にアレンジする。その試みは決して新しいものではありません。『幻想即興曲』のロックバージョンや、『アイネクライネ・ナハトムジーク』のラップバージョン、さらに動画サイトを探れば、『別れの曲』の演歌バージョンや『黒鍵エチュード隅田川夏祭り』など、アレンジは枚挙にいとまがありません。では、クラシカロイドの新しかった部分は何か?

 1つは、交響曲ピアノ曲も、等しく3−5分の日本語歌謡曲にしてしまったこと。これはある意味事件ではないでしょうか。「英雄ポロネーズ」や「ラ・カンパネラ」を「歌える」という、新たな可能世界ができてしまうことになるんですよ! 本来、楽器を弾ける人にしか奏でられなかった旋律を、気軽に口ずさめてカラオケで歌える歌にしたしまったことは、大変に大きな意義があると思います。音羽博士のいうとおり、最高の楽器は、そして最も人口に膾炙した楽器は、人間の身体なんですから。ショパンあたりは墓の下で文句を言っていそうですけど、彼の曲をピアノ弾かない人(私のような人)にも広めるきっかけにはなると思うので、我慢していただけたらとは思いますね。

 2つ目は、多様なジャンルを取り入れたこと。ロックもポップスもユーロビートもラップもレゲエもボカロも演歌もスリラーも、全部「ムジーク」という一つのキーワードを入れれば、そのアレンジに接続できるようになったこと。これは、クラシックだけでなく、いろんな音楽に興味を持つことを大いに助けるものです。ボカロにしか興味がなかった私も、これをきっかけにジャズやロックを聞いて見たいと思うようになりました。もちろんクラシックもですよ。バッハからドビュッシーまで。

 3つ目は、歌詞をつけたこと。これもショパンさんが草葉の陰でお怒りになりそうなことですが、本来中性的である(例えば、「皇帝」もこのタイトルを見ずに聞くと美しく繊細な曲に感じたりするじゃないですか)音楽に、歌詞という一つの解釈をつけたことで、JPOPやボカロしか聞かない人にもクラシックが受け入れやすくなったと思います。「ジャパニメーション英雄ポロネーズ」の二次オタを応援する歌詞を聞いて勇気付けられてから、これがポーランドの独立を願って書かれた曲だと知り、しかるのちに原曲を聴く、すると、あの勇壮なメロディがすんなり受け入れやすくなりますよね。そういう効果が歌詞にはあると思います。

 4つ目は、劇中で魔法にしたこと。これも歌詞をつけることと似ていますが、ムジークを単なる歌ではなく、作中世界で様々な超常現象を引き起こす魔法にしたんですよね。これは「音楽ファンタジー・夢」のコンセプトと相当似ていますが、違うのはクラシカロイドのムジークは多分に「意味」があること。例えば、チャイコがバッハに言いたいことを言えずに悩んでいた、という文脈から、色々ぶっちゃけさせる「ハンガリー狂詩曲」のムジークが生まれたように、ムジークの織りなす世界はほぼ常に文脈依存です。これ、すごくいいと思うんですよね。キャラやストーリー目当てで見ている人や、メロディを歌えるようになるぐらいに「受容」できない小さな子供達にも、鮮烈なイメージをもってクラシックの音楽が伝わりますから。のちに原曲を聴く際に、。退屈にならないための補助イメージとして大いに役立つでしょう。

 クラシカロイドからクラシックに目覚めたくちで、あまり偉そうなことは言えませんが、要するにムジークは、「JPOPやボカロに慣れ親しんだ人が、クラシックの有名なメロディを、耳慣れたギターのギュンギュン音やシンセのピコピコ音で聴くことで、原曲に入り込みやすくなる」という効果と、「アニメ重視の人と小さな子供に、鮮烈な映像とともにクラシックを提供することで、導入を助ける」という効果の二つがあるようです。二方向からクラシックをPRする、その周到な戦略には思わず唸ってしまいます。Good Job、企画者さんたち!

 私はもともと、パロディやオマージュなどの「真面目な悪ふざけ」が大好きだったので、ムジークには俄然どハマりしました。原曲を知っていた曲も知らなかった曲も、みんな大好きです!

 以下、個人的に、これは「革命」ではないか!?と思ったインパクトのあるムジークを簡単に紹介したいと思います。

 

・「夜半の月〜幻想即興曲より〜」

・「恋はジョリジョリ〜華麗なる大円舞曲より〜」

 違和感仕事しろ! ショパンの名曲が、中毒性とリズムまでそっくりなボーカロイド音楽に(一応原曲も中毒性があります)。前者は「初音ミクの消失」、後者は「みっくみくにしてやんよ」の系譜を多分に引いている。そりゃあショパンが動画サイトに投稿したらバズるわw

 

・「ジャパニメーション英雄ポロネーズ

・「子犬のカーニバル〜子犬のワルツより〜」

 いい意味で原曲を冒涜している。自由と独立を歌った歌がオタク応援ソングに!? 子犬の可愛さからインスピレーションを得た曲が頭の中お花畑の子犬讃歌に? だがそれがいい。話題を卑近にすることは、波及への近道。

 

・「嗚呼 えんどれすどりいむ〜乙女の祈りより〜」

・「シューベルトの魔王道」

・「Life is Beautiful〜ザ・グレートより〜」

 演歌にヒップホップにレゲエ。今の若い人(自分もだけど)には馴染みのないジャンルへの扉を開いてくれる曲。どれも、それほどゴリゴリに演歌やラップしておらず、聴きやすく歌いやすい。最高の入門編。

 

・「How to Win! 〜トッカータとフーガより〜」

 イメージの払拭。あまりにもかっこいい曲。もうチラリーン、鼻から牛乳なんて言わせない!

 

・「みかんゾンビマーチ〜トルコ行進曲より〜」(1期17話)

・「豊穣の夢〜エリーゼのためにより〜」(1期22話)

・「Fool Love Rhapsody〜ハンガリー狂詩曲より〜」(1期8話)

 有名なメロディを余すところ使った良アレンジを彩るのは、ムジークシーンの鮮烈さ。もう一生忘れないだろこの曲のこと!

 

・「情熱について語るべき2、3の真実〜田園より〜」

・「皇帝の美学」

・「六弦の怪物〜クロイツェルより〜」

・「愛の鐘〜ラ・カンパネラより〜」

 バイオリンやピアノの音をギターや電子音に変えるだけで、こんなに雰囲気が違うんですよ、お嬢さん。

 

 このように、映像面からも音楽面からも歌詞面からも素晴らしすぎるムジーク。ぜひみなさんも一度聞いて見てください!」

 

 

総括

ナジェ「ストーリー、キャラ、ムジーク。この3つを振り返って見て思ったのは、このアニメが目指した境地は大人も観れる子供向けアニメだということ。小さい子が共感できそうなモツというキャラクターや、昨今のアニソン以上に口ずさみやすいムジークのメロディー、そして、戦列でわかりやすいムジークの効果を見て、このアニメの主役はやっぱり子供なんだと確信したよ」

 

ミーチャ「それでもなぜ、主婦や大学生などの大きなお友達を大勢獲得できたのかというと、アウトとセーフの狭間のネタを大量に仕込んできたから。そもそも音楽家とは1ミリも関係のない完全ギャグ回が1クールに2つぐらいある時点で、NHKに対する挑戦だよね。それでも飽き足らず、おっぱいやピー音などの下ネタ、競馬などのギャンブルネタ、新興宗教やドローンなどの時事ネタ、ニコ動や5ちゃんねるなどのネットネタ、メタフィクション、パロディ、オマージュと次々と爆弾を投げ込んできて、全く飽きさせない構成だった。これから3期、4期と続いて、もっといろんな悪ふざけを仕込んで欲しい!」

 

ナジェ「クラシカロイドのおかげで、ショパンやリストと、その音楽が大好きになり、ポーランド語とチェコ語の学習を始め、悩んでいた進学先を東欧文化コースに変えました。人生を変えたアニメ、それがクラシカロイド。ありがとう、ありがとう。また3期で会えることを願って、感想を締めくくりたいと思います」