おいでよクラシカロイドの沼

クラシカロイド 感想。私(ナジェージダ)、ミーチャ(相手方)の座談会形式で行います。よろしくお願いします。

おとなのクラシカロイド 「opus.」あらすじ  

おとなのクラシカロイド 「opus.」あらすじ

 

漫研の3人を励ました後も、「フレディ・マジョルカの優雅な憂鬱」の連載を続けているショパン。しかし今日はいいアイデアが浮かばず、自室の中をウロウロしていた。そして、タンスに小指をぶつけてしまう。途端に、前世のある記憶が蘇った。いてもたってもいられなくなったショパンは、これまで投稿したフレマジョの漫画のサブタイトルを消す。21話「水に流しても憂鬱」は「opus21」へと変わった。

 その異変に初めて気づいたのは、フレディマジョルカの優雅な憂鬱を毎回欠かさずに読んでいた奏助である。一体どうしたのかと問いただす奏助に、ショパンは思い出した前世の記憶を語る。

 ショパンは「絶対音楽」の徒だった。つまり、小説や美術などという他の芸術と結びつかない、純粋に音楽的なインスピレーションによってのみ作られる音楽こそ真の音楽とする。彼にとっては、言葉遊びのようなオペラなどは、「音楽ではない」のだった。

 そんな彼が嫌ったのは、作品にタイトルをつけられることだった。

 ショパンはなぜかシューさんを睨む。そして、ディスプレイに映ったジョリー2の絵も。

「『幻想即興曲』も、本当は幻想曲4番opus66で十分なのに、フォンタナのやつが勝手にタイトルをつけたんだ。しかも出版しないでって言ったのに勝手に出版して。『子犬のワルツ』も『雨だれ』も、変な逸話をジョルジュが残したからそんな俗称が広まったんだ。僕はそんなの許さない」

「賛成だ、ショパン。俺も『交響曲第5番』や『ピアノソナタ14番』を、ある一つのフレーズだけからインスピレーションを働かせて作ったのだ。勝手に『運命』とか『月光』とかのタイトルをつけられたのには閉口したな」

 意気投合し始めるショパンベートーヴェンを制したのは、すでにムジーク衣装に変身したリスト。

「そんなことないわ!」

 リストは「標題音楽」の創始者であった。作品に自分でタイトルをつけるようになったのも彼女(彼)が始まり。その証拠に、タイトルからイメージを膨らませた「パガニーニによる超絶技巧練習曲第5番「狩人」」、宗教観を映し出した「レ・プレリュード」、ファウストの一場面をピアノで表現した「メフィスト・ワルツ」を作っている。自分の作品にタイトルをつけたりもしている。「おお、愛しうる限り愛せ!」と名付けられた「愛の夢第3番」はその例である。

「作曲家だって生きているんだもの。その作品が現実生活と結びつくのは当然でしょ。現にあなただって失恋から別れのワルツを書いたり、ポーランドへの愛国心から「英雄ポロネーズ」「革命エチュード」を作ったじゃない。なら芸術作品や思想を音楽に反映するのも、その延

長として考えるべきよ。第一番号と何短調とか何長調とかだけじゃ、覚えづらいわ。もっと聴衆のことも考えるべきよ!」

 3期から新キャラとして編入した双子、ドビュッシーラヴェルも頷いている。歌曲の王であるシューベルトも、それに参入し始めた。

「ベトも、『田園』は標題音楽でしょ? それにことあるごとに『運命』『運命』言ってるんだから、勝手につけられたタイトルも、結構好きになってるんでしょ?」

 その言葉にぐらつき出すベト。四面楚歌になったショパンは、ムジーク衣装に変身。

「じゃあ、ムジーク対決と行こうじゃないか!」

 リストは「愛の鐘」を、ショパンは「夜半の月」を繰り出す。しかし、相手を電脳世界に送る効果は発動せず、ただ美しい音楽が流れるだけである。しかも歌詞なしのインストで。

「そうか、ムジークというもの自体が、自分の音楽を超常現象と結びつけることだったから、それを否定したいま、僕は魔法を使えないんだ!」

 がっくりとうなだれるショパン。しかし、目を開けると、そこには恍惚とした表情でくずおれているリストの姿があった。

「ああ、なんて清らかな響きなの! 今までムジークを発動するときには、超常現象に気を取られて気がついていなかった。私たちが現代に生まれ変わって生み出した音楽は、こんなに美しいものだったのね!」

 状況に気づいたショパンは、調子に乗った顔で、勝ち誇ったように叫ぶ。

「そうだ! 僕らが現代に生まれ変わってきたわけは、音羽博士のいうとおり、世界に新たな至高の音楽を響かせることなんだ! もはや歌詞も魔法もいらない! 純粋な、我々の美しい音楽を響かせるんだ!」

 そのまま「4.amNocturne」インストをかけ、魔法がなくとも天に昇っていきそうなショパンに、奏助が水をさす。

「じゃあ、フレマジョもボカロもやめちゃうんだよね? だってその「純粋な音楽」ってのと違うじゃん」 

 ショパンの手がピタッと止まる。

「いや、それとこれとは別だよ!? 漫画も文筆も僕は大好きだからさあ」

「いや、でも、もう純粋な音楽以外何もいらないって言ってなかった?」

 自己矛盾に気づいたショパンは叫び声をあげ、ムジークが止まる。

 そのままタイトルをつけ直す気力を失ってしまったショパンだが、フレマジョのコアなファンの間では「第何話」で話が通じてしまうので、タイトル変更騒動はそこまで話題にならずに住んだのだった。もっとも、新規ユーザーの数は、減少したが。