おいでよクラシカロイドの沼

クラシカロイド 感想。私(ナジェージダ)、ミーチャ(相手方)の座談会形式で行います。よろしくお願いします。

クラシカロイド 3期8話『愛しのエミリア』

クラシカロイド 3期8話『愛しのエミリア

 

あらすじ

 ショパン漫研の3人との交流は続いていた。今日も彼らとカラオケに行くショパン。ちゃっかり奏助も同行している。

「同じアーティストとして、漫研のみんなとも仲良くしたいし、俺の美声をみんなに聞かせたいし!」

 あのほろびのうた「僕フツウ」をアカペラで歌い出さないかハラハラしているショパンを尻目に、そこそこの歌声で流行りのJPOPを歌い上げる奏助。

 そのあとマイクを手に取った相田が、「流行りの曲じゃないけれど……」と恥ずかしがりながら歌い始めたのは、なんと『恋はジョリジョリ』だった。

 思わず声を上げるショパン。その不審な様子を問いただす漫研のみんなに、ショパンは正直に、それを作曲したのは自分だと答えた。

 3人から歓声が上がる。奏助がそれを知っていたことにも驚く3人。「フレフラ先生、漫画だけじゃなくて、ボーカロイド音楽もやってくださいよ! もうブームは過ぎちゃったけど、あのジョリーの歌、大好きだったんです!」

 奏助も続く。「そうだよ! ついでに俺にDTM教えてくれよ! なんであの時気づかなかったんだろう! かっこいいボカロ曲作れれば再生回数上がるし、女の子にもモテモテじゃん!」

 良き友である漫研の3人におだてられ、「フレディマジョルカの優雅な憂鬱」の時みたいに、妙なやる気が湧いてしまうショパン。「よし! ボカロを始めるぞ! ついでに奏助にも教えてやるよ、DTM!」

 それから、ショパン自分の声による人力ロイドを使って、ボカロ曲をアップするようになり、合間に奏助に電子音楽の基礎を教えるようになった。しかし奏助のサボりぐせが災いしてなかなかうまく進まない。

 作曲家としてのハンドルネームはピション。「恋はジョリジョリ」の作曲者であることは伏せたものの、第1作から、地味ながら美しい曲と静かな話題を呼び始め、再生回数は徐々に伸びていった。しかし、ジョリーの時ほど爆発的なヒットにはならない。漫研にかっこいい自分を見せたいショパンとしては辛いところだった。

 そんなある日、メールが届いた。

「私はエミルカ。20代女性、フリーの脚本家です。あなたの曲のファンです。ただ、歌詞は、少し内輪の雰囲気があり近寄りがたい。もっと多くの人に届くように工夫した方がいいかも。よろしければ、私に歌詞を書かせていただけますか?」

 添付された顔写真、その茶色いロングの巻き毛を見て、ショパンの脳裏に前世の記憶が蘇った。

 フレデリック・ショパンは女兄弟3人に囲まれて育った。姉妹たちとは仲がよく、ピアノを始めたのも姉ルドヴィカの影響である。だがとりわけ好きだったのは、末の妹、エミリアだった。ドイツ語ポーランド語フランス語を使いこなす文筆家で、劇の脚本を書くのが得意だった彼女。ショパン家二人目の神童と言われた彼女を、フレデリックは「エミルカ」の愛称で呼び、彼女の書いた劇に合わせてピアノを弾いたり役者をやったりして、仲睦まじく過ごしていた。

 そんな愛しい妹に瓜二つの女性。ショパンは二つ返事で承諾した。以降、作詞:エミリア、作曲・編曲・調声:フレデリックのユニット「ホピン」は、正体を隠し、一人のアーティストとしてネット上で活動した。その人気はうなぎのぼりに。

 作曲に告知にと忙しくなる裏で、ショパンは奏助のことを放り出すようになっていった。それでもしつこく絡んでくる奏助に、ショパンは一言、「基礎からやる気がないならほっといてくれ!」。学園祭の時のトラウマをえぐられた奏助はしばらく落ち込んで何も言えない。

 音羽館のみんなではちゃめちゃな「奏助慰めパーティー」が行われている裏で、リッちゃんとシューさんだけがショパンを心配していた。まさか、あのジョリー事件の再来? ただ、ジョリーへのショパンの思いをよくわかっている2人であるだけに、口出しはできなかった。

 ユニット「ホピン」は、ついに渾身の力作(革命エチュードのムジークバージョン)を作り、ニコ生で配信することになった。そのときは、お互いの素顔を晒し、ユニットであることを明かす予定だった。エミリアのことを思い浮かべながら、作曲にはげむショパン

 指定されたオフ会用の場所に、時間通りに訪れるショパン。不審な様子を感じたりっちゃんとシューさんが跡を追い、つられて奏助がその跡を追う。待てど暮らせど現れないエミルカ。心配になってネットを覗くと、なんと「ホピン」のニコ生配信が始まっていた。映像に映るのは、30代のイケメンだがいけすかない顔の男。新曲の製作は作曲編曲も含め全て自分で手がけたとのたまう彼に、ショパンは怒りを隠せない。彼の嘘を鵜呑みにして、彼を崇める視聴者たちにも。抗議のメールを送るも、相手は「騙されるお前が悪い」と言う。さらに、ショパンの単独アカウント「ピション」への攻撃もファンに指示する。ピション=フレマジョはすでに突き止められていた、炎上していくフレマジョのブログ。

 そのまま音羽館の自室に飛んで帰り、機材を用意してニコ生配信を始めるショパン。その脳裏に浮かぶのは、14歳で夭折したエミリアの顔と、彼女が最後に残した言葉。

「死んでしまうのは怖くない。ただ、人々の記憶の中で死んでしまうのが悲しい」

「生まれ変わった今だって、僕は君のことを忘れていない。それなのに、この気持ちを、こんな風に利用されてしまうなんて」

「人間なんてもう信じない」

 カメラの回る前で、ムジーク衣装に変身し、呪文を唱える。

 発動させたのは、「夜半の月〜幻想即興曲より〜」。かつては愛しい恋人のために作った曲を、今度は愛しい妹をめぐる復讐のために使う。途端に電脳世界に吸い込まれる、詐欺師をはじめとした世界中の視聴者たち。異変に気付き、ムジークで止めに入ったベートーヴェンたちも、怒りの一声を浴びせた歌苗も、言葉で説得しようとしたリストとシューベルトも、ショパンは電脳世界に閉じ込めてしまう。

 暴走するショパンを救ったのは、遅れて帰ってきた奏助だった。

「僕がお人よしだったからいけないんだ! 僕はバカだったんだ!」

「そんなことねえよ。チョピンさんは、人嫌いだけど、人をすぐに信じてしまうところがあるから、俺を頼って事務所逃げ出して来てくれたんだろ! めっちゃ嬉しかったよ! DTM教えようとしてくれたのも! 

 今回は相手が悪かったんだよ。あんなみみっちい奴ら、ほっといてやろうぜ!」

 その一言で、ムジークを止めるショパン。しかし、詐欺師の戻る先は、なぜか彼の自室ではなく、音羽館だった。なおも憎々しい顔を向ける詐欺師に、ショパンは怒りの鉄槌を浴びせる。

「これが、僕の渾身のムジークだ!」

 そして放たれる新ムジーク「革命エチュード」。「状況をひっくり返す」効果のあるムジーク。今まで「ピション」を叩いていた視聴者が、その攻撃の矛先を一斉に詐欺師に転ずる。ショパンも不死鳥を背に抱いた皇帝の姿になり、詐欺師を物理的にひれ伏させる。ぐうの音も出なくなった詐欺師はその後ネット上から姿を消す。

 騒動が終わり、再び「ピション」として地道に行動を続けるショパン。奏助への指導も再開したが、怠惰な姿勢をやめない彼。挙げ句の果てに「今度はゲーム教えてよ」と言い出す彼に、ショパンは再び「革命のエチュード」ムジークを発動させるのだった。